まちのZINEフェス 2026年度巻頭言
「ふたばZINEフェス2024」以降、ZINEの現場を観測してきた。雑誌の廃刊や書店の閉店などの暗いニュースが続く中、ZINEブームは広がり、シェア書店や独立書店が立て続けに開業し、フェスの規模は拡大の一途をたどっていった。
しかし近年の盛り上がりは、与えられた販売ブースや展示エリアを個人のSNSと組み合わせ、リーチや売上を最大化するという手法によって成り立っており、それはまるでSNSが現実の空間に落とし込まれたかのように見える。これは豊かなことなのだろうか。
作って売って届けることにおいては合理的かもしれないし、メインストリームの出版や書店が生き残っているうちは即売会という形態は良かったのかもしれない。
しかし僕たちは、1年前の大型のZINE即売会に誰が出展し、どのような作品群が並んでいたのかを覚えていない。そのために、地域・年代・ジャンルなどの多層のレイヤーから注目の作家を取り上げることもできない。
かつての雑誌やメディアが廃れていき、ZINEの盛り上がりとブックフェスに希望が託されつつある中で、既に各々の作家活動の公開の場を提供するだけでは物足りず、別のかたちで情報を編み直していくプラットフォームにしなければならないのではないか、と考えるようになった。
このゲームチェンジで失われたのは〈編集〉である。それは今の時代のカルチャーを追いかけ見つめる力であり、読者に新しい視点を与える力であり、新しい知を切り拓く力だ。
雑誌、展示、店舗の棚。第三者による〈編集〉こそが、新しいカルチャーやプレイヤーを掘り起こし、再定義してきた。そして僕たちはその光景を日常の中で何気なく目にするという体験があった。しかしその何気なさは店舗の閉店や廃刊、コストダウンによって失われ、インターネットに統合されていった。
しかし今や、一部のビュー数を増幅し、AIレコメンドという形で偏った情報を提供され、分断を加速させるSNSやインターネットに〈編集〉の可能性は期待できなくなってしまった。
僕たちはまたリアルな場で人とやりとりをする重要性を認識してきている。現在のZINEブームというビッグウェーブはそれを表している。だからこそ、今までにないものを創り上げるには、メディアの形態を変えリスタートする必要がある。
「まちのZINEフェス」は単なるイベントとして位置づけるのではなく、雑誌の未来を作るものにしたい。
それは雑多な情報を並べ、あるときはエンターテインメントと人文を、まちづくりとストリートを、観光と対話を同列に並べてジャンルを越境させていく。そしてあらゆる街に介入し都市と地域の可能性を広げ、新しいネットワークを構築する。
著者、観客、街、作品…そのすべてに新しい橋をかけ、人々の知的好奇心を拡張する〈編集〉を機能させたイベントとマガジンのスタンダードをつくる。
僕にその力があるのか分からないが、あらゆる地域のプレイヤーと協働すれば少しはできるかもしれない。その可能性を信じたいと思う。
2026年3月19日
「まちのZINEフェス」編集長 沖 健汰